お年寄りの住生活に対する意識調査については、これまでも多くの調査機関からの報告がありますが、これらに共通していることは、次の3つです。
(1)自分が長く生活してきた場所にそのまま住み続けたい。
(2)同じ場所に住み続けることにより、近隣との交流を続けたい。
(3)たとえ「寝たきり」になっても自宅で生活したい。
つまり、住宅に大きな期待がかけられているのです。こうした希望は、実は何もわが国に限られたことではなく、ほとんどの国でそうであり、それまでの住宅に住み続けることこそが、お年寄りの希望であると同時に現実的な解決策といえます。





・住宅のデザインの問題
●住宅内に多い段差
玄関の敷居、上がりがまち、廊下と和室、洋室と和室、脱衣室と浴室など、住宅内のあちこちに段差が見られます。それが、お年寄りの生活動作を著しく不便・不自由にし、ときには転倒事故の原因にさえなっています。
●介護する際に支障の多い伝統的なモジュール(尺貫法)
かつての尺貫法の影響がきわめて強いことに関連して、設計者がこれまで常識として決めている廊下、階段、開口部等の幅員では狭いために、介護を必要とするお年寄り、福祉用具を使用するお年寄りの室内移動に適していません。
●狭い住宅面積
室面積が狭いことに加えて、家具類の使用によってますます狭くなり、介護を必要とするお年寄り、福祉用具を使用するお年寄りの室内移動を困難にしています。
●身体的に負担のかかる和式の生活様式
和式の生活様式(床座の生活、トイレでの立ったりしゃがんだり、和式浴槽をまたいで入る等)は、お年寄りの身体機能から考慮すれば不向きです。
●防寒に不十分な住宅構造
日本の住宅は「夏に合わせて」造られているために、冬季の寒さには向いていません。室内の温度差が大きいために健康面にも問題があります。これらは、お年寄りが障害をもったときにますます問題となってきます。
●福祉用具を導入しにくい住宅構造
身体機能が低下してくると、どうしても介護が必要になったり、杖・手すり・車いす等の福祉用具を活用することになりますが、以上に述べた住宅構造上の制約からその効果を十分発揮し得なかったりすることが多くなります。

平成12年度において、家庭内における主な不慮の事故の死亡は全体で11,155人あり、このうち65歳以上の高齢者が8,378人となっています。また全体に占める比率も75.1%ときわめて高い割合です。
家庭内という一見安全と考えられているところで、このように多くの死亡事故が発生しているのは問題です。しかも、この家庭内事故による死亡のうち、溺死(浴槽内での溺死及び、浴槽内への転落による溺死)が約29.5%を占め、転倒・転落…スリップ・つまづき及びよろめきによる同一平面上での転倒が9%、階段・ステップなどからの転落・転倒及び建物などからの転落が7%、その他、火傷、ガス中毒等も含めると、住宅に起因していると思われるものが半数を占めています。

出典:厚生労働省統計情報部「人口動態統計 年報 平成12年度」
これは、現在の住宅構造が、高齢者の存在を前提にしておらず、必ずしも高齢者による居住に適していないことを示しています。しかも、高齢者の事故の多くは、ケガからの回復が長引き、結果として行動能力の低下につながっていることも否定できません。


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